2021年11,12月に読んだ本。作りたい女と食べたい女、きのう何食べた?、Shrink 精神科医ヨワイ、旅する練習など

11月、12月読んだのは12冊。そのうち漫画が5冊。漫画5冊がめっちゃよかったな。

感想はネタバレ込みです

きみは赤ちゃん

読みながら色々考えたので別途記事に書いた。
nappyon.hateblo.jp

Shrink 精神科医ヨワイ(7)

10月に6巻の感想を書いたけど(2021年10月に読んだ本。カラーひよことコーヒー豆、ことばと思考、和菓子職人 一幸庵 水上力、Shrink 精神科医ヨワイ、ブルーピリオド - 日常が7で非日常が3くらい)、かなりハマっている漫画。
6巻でアルコール依存症編が完結して産後うつ編が開始したので、7巻もとても楽しみにしていた。

産後うつ編も、様々な社会的サポートが紹介されつつ、一つ問題が解決したからすっきり解決…というわけにはいかないところが作品としてよかったなーと思う。
クライアントの気質とか環境だけではなく、社会的な構造の問題も描いていて、色々なところに目配りしながら描かれてる漫画って感じがする。ちょっとステレオタイプ的な人物の描き方だな~と思ったりする箇所もあるけど、主要な人物とその周辺の問題についてはすごく真摯だと思う。

産後うつ編を読んで改めて感じたのは、産後の夫婦の体力や精神面の差、環境の違いなどは本当に怖いしすれ違いを誘発するということ。
弱井先生の「隣にいるのは敵ではなく一番の味方のはずだ」という言葉は心に刻んでおく。『きみは赤ちゃん』の感想にも書いたけど「だんだん世のなかの「男全般」や「男性性」というものが本当に憎くなってくる」メンタルに陥る気しかしないので…。

あと、7巻で面白いなと思ったのは、「隣にいるのは敵ではなく一番の味方のはずだ」というメッセージを伝える物語の次にDVが描かれたこと。
家族の支え合い的な美談がフィクションにしてもノンフィクションにしてもたくさん存在する世の中だなと思うけど、この漫画は家族はあたたかいだけのものじゃない、逃げてもいいんだってことも描いてくれるからそこがいいよなと思う(パーソナリティ障害編でも、アルコール依存症編でもそうだった。後者では逃げ道を確保しつつ支えるという形になっていたけど)。

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作りたい女と食べたい女(1)(2)

Twitterで読んで、いいなと思ってたので購入。

2人の人間の「作りたい」「食べたい」という欲がかみ合って、欲だけじゃなくて人としての思いやりも重なり合って関係を丁寧に構築していく…めっっちゃ素敵な漫画。

ファーマーズマーケットで「存分に買ってください」と言う春日さんが最高すぎた。野本さんがやりたいことをわかってくれてるんだなぁと感じる。
そしておでん回の野本さんがわたわたして言葉を重ねているのがめちゃくちゃかわいい。少女漫画でめっちゃ理由つけてデートに誘うあれ!と思った。

1巻では女としての生きづらさや憤りも描かれており共感するところが多かった。全部モテに回収しないでくれ…とか、ご飯を女だからって勝手に小盛にしないでくれ…とか(これちょいちょいあるけどムカつき度かなり高いんだよね…)。

そして2巻では野本さんが自分の「好きだ」という気持ちを肯定できたり、2人で年越しをしたり…色々なことがググっと進んだ。
2人の部屋の間の空き部屋に入居者が来た…?ということもあって、2人の関係以外の変化も感じる。

クリスマス~年末にかけての2人の空気がめっちゃいい感じで、2人がこの先どうなっていくのか楽しみで仕方ない。

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きのう何食べた?(18)(19)

この漫画、漫画の中で着実に時が流れ続けてるのがすごくいいよな~と思う。

特に19巻のピーマンの肉詰め回がぐっときた。修先生が教官をすることで自分が多忙になるかも…とシロさんから聞いたケンジが、すまなそうな顔を穏やかそうに見つめて、でもシロさんはそうしてあげたいんだよね、とシロさんの気持ちを汲んであげて、「まあそうなったら今度は俺が毎日晩ごはん作ってシロさんのこと待っててあげるからさ~~」と答えたところ。
これまでにも色々な転機は描かれてきたけど、そういう変化を受け入れて2人の役割も変えながら生活していける、だから大丈夫っていう信頼と柔軟さを感じる会話だった。

老いの話も含め、パートナーと今後も人生を共にしていく上でのお手本のような漫画だと感じる…。

と思うと同時に、18巻での夏休み前日のシロさんからの大事な話。
シロさんとケンジのかみ合わない部分をコミカルに描きつつ、同性カップルの権利が保障されていない日本の問題を描いている。
パートナーと生きる上でお手本にしたい漫画だと感じると同時に、自分は異性のパートナーと結ばれたがために得られている権利は、相手が同性であるというだけで得られなくなってしまうんだよな…と。
漫画を楽しむだけじゃなく、そこで描かれた問題について現実でも関心をもって行動しないといけないなと思う。投票だけじゃ足りないよねぇ…。。

そして大晦日回、素敵だった~。年末年始のルーティンってなんかあるよね。シロさんの実家の件では色々あったけど、そういうのも超えて2人の形みたいなのができあがっていくのがいいな~って思った。

ちょうどこの漫画を読んだ数日後に「栗きんとん作るぞ~!」とウキウキさつまいもを茹でて裏ごしして腕の痛みに苦しんだ。「裏ごしがしんどいって描いてあったのにすっかり忘れてたな…」と、裏ごしをしながら思いだした。

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旅する練習

描かれている内容もいいなと思ったし、旅小説としても面白かった。

「いまここにしかない時間」「いまここで自分しか目撃していない景色」について思いを抱くことがしばしばあるので、そういった視点に共感しながら読んだ。
そんな時間や景色が無数に存在している世界で、人は何を残すことができるか?
歴史にも残る大きな業績や人々の日々の行為が残す見えるものから見えないものまで、何かを残すということについて切実な願いを込めて描かれているように感じられた。

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暮しの向付

『食べたくなる本』で辰巳芳子という名前を見たので、この本が目に留まった。辰巳芳子が編集した、母の辰巳浜子の随筆集。
随筆は四季ごとにまとめられており、年末の台所仕事の文章があってちょうど年末だし読んでみることにした。

「昔から天皇様が何かされる日はお天気にきまっていた」とか「最近のミセスは酒のかんもできない自分を棚に上げて…」みたいな、思わず読みながら「おお…」と声を上げてしまうような時代を感じる箇所もありつつ、ごまめ、八つ頭、ずいき、とこぶし…知らない言葉を調べつつ楽しく読めた。

ひとつ面白かったのが、「お正月」という文章のこの部分。

 故柿沼桂堂博士は「人間にとって最後まで残される幸せのひとつに味覚の喜びがある。足腰が立たなくなっても味覚の感想は衰えない。むしろ老境に入ってますます進歩する事実を度々見ることがある。これは老人にとって最大の救いであり、神のお恵みでもある。それ故、老人の食いしん坊を、おかしいと笑ってはなりません。つとめて色々の物を食べさせて上げる事こそ大切であり、当然でもある」とうかがいました。(p.132)

現代とはまた老人のイメージも違うのだろうが、「本当か…?」と疑ってしまった言葉。ただ、読んでいるうちにこの柿沼氏が食いしん坊で美味しい物を食べたかったようにも思えてちょっとおかしくなってしまった。

その他の部分も色々と興味深かった。日々の生活に密着した暮らしの随筆を読むと、世の中が随分変わったのだということがよくわかる。生きている時代の近い筆者によるエッセイ・随筆を読むのも面白いけど、昔の随筆集を読んでみるのも面白いものだと思った。

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