5月に読んだ本。わたしがいなかった街で、日常 Vol.1、中国茶&台湾茶 遙かなる銘茶の旅

5月に読んだ本は3冊。 5月はなぜか中国語学習にはまっていてあまり本を読まなかった。

わたしがいなかった街で

↓こんなことを呟いたらバーニングさんにおすすめしてもらいました。ありがとうございます!

なかなか難しい小説だった。主に砂羽という人物の視点で話が進む。砂羽は夫と離婚後、引っ越しをして、どこか定まらず、足の置き場が見つからないような暮らしをしている。契約社員として働いていて、職場での人との交流はぎこちない。家では戦争や紛争を撮ったドキュメンタリーばかり見ている。

そんな砂羽は、「もし過去が違えば、わたしはここにいなかったかもしれない」とか、「なぜわたしは彼らではないんだろう」といつもぐるぐる考えを巡らせている。
この本が面白いのは、文章が砂羽の思考をなぞるようにぐるぐる、だらだらしているところ。読むのが大変なんだけど、同時に面白くもあった。

物語の途中から、葛井夏という人物の視点が入ってくる。夏と、砂羽の世界とのかかわり方は対のように描かれているような気がした。 この、世界とのかかわり方の違いが心に残っている。また、読み終わってからもふとした時に思い出される。

砂羽は、人と自分との境界があいまいな人物として描かれていると思う。
前述のように、ドキュメンタリーのカメラに映る人物を見て「なぜわたしは彼らではないのか」と感じるし、友人のなかちゃん(行動力とコミュ力の鬼のような人物)がわたしの代わりに色々なものを見てきてくれるから、その話を聞くだけで楽しい、というようなことを言っている。
また、砂羽は今よりも過去を生きているような印象を受ける。
海野十三『敗戦日記』で描かれている土地を歩いたり、原爆が投下される少し前まで広島にいた祖父母から砂羽への血のつながりについて考えたり。ドキュメンタリーのカメラが捉えているのも過去のことだし、なかちゃんが話してくれるのだって過去に起きた出来事だ(まぁ、なかちゃんは今そこにいる人物なのだが)。

夏の視点では人と自分との境界がはっきり描かれる。「わたしは彼らではない」「彼らと同じように感じることはできない」と明確に感じる出来事も起こる。
しかし、人と自分とは違うというところから人を突き放すわけではなく、「わからないから聞く」というスタンスを取るようになる(砂羽の友人であるなかちゃんの行動の影響を、長年友人である砂羽ではなくたまたま会った夏が受けるのがまた面白い)。
今ここにいる人に聞いてみる、という意味では、過去と現在という意味でも砂羽とは異なって描かれているかもしれない。

私は夏に共感するし、夏のパートの方が気持ちよく読めたものの、やってることはわりと砂羽に近いよなと思いながら読んでいた。ドキュメンタリーや紀行文などが好きで、砂羽と同様に人の体験を借りて物事を感じたり楽しんだりしている。Twitterで人が書いた経験を読んで一緒に怒ったり楽しんだりすることも多い。今ここにいる人と話したり、何かを聞いたりすることは苦手だし、そういった行動を取ろうとはあまり思わない。
この作品はそうした捉え方や行動、感じ方に価値判断を下すような作品ではないし、砂羽と夏の描き方もざっくり捉えたら対になっていると感じたけれども、そう単純でもない。
だからこそ、読み終わった後にも心に残って、自分が何かを見たり感じたりするたびに思い出されるし、思い出して色々考えてしまう。

honto.jp

日常 Vol.1

SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERSで購入。
この本屋さんは最近たまたま見つけたんだけど、本の並びがすごく好みで、見ていてワクワクする。趣味の本、思索を深められそうな本、美しい本、社会の問題を捉えた本、色々あって読みたい本が増える。
そんなに間をあけずに2度訪れたけど、結構棚の並びが変わっていた印象(タイミングもあるかも)。行くたびに発見がありそうなお店。

この本は色味とタイトルが良いなと思って手に取った。手触りや本文の雰囲気、写真もいい。

日本まちやど協会というところが発行していて、テーマはずばり「まちやど」。
まちやどとは、「まちの日常を最大のコンテンツとすることで、地域固有の宿泊体験を提供」するものらしい。その地域の人々とその暮らしを、旅行者につなげてくれるもの。

「まちの日常」っていうのはまさに、私が旅に求めているけれども、旅で得るのが難しいと感じている体験だった。旅先で、「この街の人々はどんな暮らしをしているんだろう?」と思うことが多く、それを垣間見ることができるととても嬉しく感じるけれど、そうした経験ができることは極々まれだ。その土地に住む人々との交流となるとさらに難しい。こういうことが得意な人にとっては難しくないのかもしれないけど…(『わたしがいなかった街で』のなかちゃんみたいな人とか)。
紹介されている宿にぜひ行ってみたいと思う。幸い、今年の5月に出たばかりなので情報はとても新鮮。

まちやどを紹介する本としてだけでなく、自分が住む地域のコミュニティや人とのつながりについて考えるための本としても良いと思った。
こんな風に地域の人と関わってみたいなと感じられた(ちなみにこの本を読んでちょっとしてから、地域のコミュニティカフェみたいなところに行ってみた!探せば意外とあるみたい)。

日常、地域のコミュニティ、土地の特色など、まちやどに関わる要素に惹かれる部分が多いので、次号も楽しみ!(年刊誌が予定されているそうなので、残念ながら読めるのはちょっと先) manapub.stores.jp

中国茶台湾茶 遙かなる銘茶の旅

中国、台湾に何度も足を運び、現地で製茶や茶文化、歴史などを学んでいる著者によるエッセイ本。
先月読んだ『中国手仕事紀行』でも一部の村で製茶の現場や古茶樹を訪ねていたけれど、この本は一冊丸っとお茶の旅(先月読んだ本についてはここ→4月に読んだ本。1984年に生まれて、中国手仕事紀行、英語独習法、一九八四年〔新訳版〕 - 日常が7で非日常が3くらい)。

著者が訪れるのは電気も通っていない山の中の村だったり、自然に囲まれた土地。ということで、描かれているのはなかなかワイルドな旅で面白い。滞在先で食べた料理の話や、茶師や友人との交流についても色々書いてあって、お茶以外の要素でも楽しめる。

茶については、製茶や歴史について様々な文献を挙げながらの解説に加えて、どんな人たちが、どんな環境でどんな風にお茶を作っているのかが詳しく書いてある。
この本を読んで、日本で良質な中国茶台湾茶が飲めるというのは本当に幸せなことだと改めて感じた。人の手で行われる製茶はとても過酷で難しく、茶を取り巻く環境というのも常に変わり続けている。社会もそうだし、気候だって変わっている。そんな状況の中で、お茶を生産している人がいて、その人とお茶を通して繋がれるというのはとてもありがたいことなんだと思った。お茶を丁寧に味わって飲みたいと改めて感じた。

中国・台湾の紀行エッセイとしても、中国茶台湾茶入門としても楽しめる一冊。 honto.jp


5月は『わたしがいなかった街で』を読んだのが大きかった。
なかなか自分にスムーズに入ってくる文章でも物語でもなかったけれど、だからこそ色々考えたし、自分の中に残っている。

先月読みたいと書いた『心と脳――認知科学入門』を5月半ばから読み始めた。6月も引き続き楽しく本を読み続けたい。