2021年8月に読んだ本。ヒトの発達の謎を解く、科学的とはどういう意味か、 レシピ以前に知っておきたい 今さら聞けない料理のこつ など

8月に読んだ本は5冊。そのうちの4冊について書く。
新書を多めに読んだけど、どれも面白くて良かった。

ヒトの発達の謎を解く

親になるということで、人の発達についての本を読もうと思い手に取った一冊。
ニコ・ティンバーゲンという研究者の論が骨子として出てくるのだけど、ニコ・ティンバーゲンのことを「私が尊敬してやまない」という言葉で紹介しているのがとてもいいと思った。他にも端々から著者の思いがにじみ出ているというか、熱が感じられる。くどかったり湿っぽかったりすることはないのだけど、研究と、その研究の内容を世の中に伝えるということに対しての思いがじわじわ伝わってくる、いい本だった。

様々な実験や学説を参照しながら進んでいくのだけど文章がくどくなく、簡潔でわかりやすかった。エピジェネティクスやアタッチメント理論といった、聞きなれない言葉から育児書などでもよく見るような言葉まで、ちゃんとしたエビデンスを参照しつつわかりやすく伝えてくれる。そしてそれらを束ねて主張に繋げていく構成がうまいなーと思いながら読んだ。
難しい学術書とかだと文章を追うだけで大変だけど、新書だと構成の面白さとかまで意識しながら読めるから楽しくて好き。

生物としてのヒトと、人間社会・技術の発展の両方について語られている本だった。IT関係の仕事をしているということもあり、子育てについても新しい技術をどんどん取り入れていきたいなと考えがちだけれど、生物としてのヒトという観点を忘れてはいけないなと思った。

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科学的とはどういう意味か

2011年、東日本大震災の後に書かれた本。新型コロナウイルスの流行が日々の行動にも大きく影響する今もまた読むべき時だと思い、再読した。

今の日本の社会では多くの人が科学を遠ざけてしまっているが、それは自身にとっても社会にとっても危険であり不利益なことだと言う。
物事の理屈を知ることを避け、「とりあえず結論だけ教えて」という態度の人が増えてしまっているという指摘はかなり耳が痛い。新型コロナウイルスの情報などはTwitterで信頼できる人を見つけて、その人の言うことをある程度は信じる(なぜそうなるかの説明は、ちゃんと考えながら読む時もあるけど時にはすっ飛ばす…)ということをしていたので、それはまさに「とりあえず結論だけ」という態度だなーと。ある程度はそうしていかないと仕方ないとは思うけど。

そんな耳が痛い話の後に、科学的な「誰にでも再現できる」「結論だけではなくその筋道を確かめる」という方法や、普段科学的なものを遠ざけてしまいがちな我々が科学から離れすぎずにいるためにはどうすべきか書かれている。

全体的に「文系」なるものに対しての恨みつらみのようなものが熱く語られているのがちょっと難だし、人文科学について触れられていないのも気になるのだけど、面白い本だし今読み返して良かったなと思う。『FACTFULNESS』とこの本はちょいちょい読み返して自分に教え込んでいきたい…。

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レシピ以前に知っておきたい 今さら聞けない料理のこつ

「今さら聞けない」という、控えめに脅しているようなサブタイトルがあまり気に入らないのだけど、いい本だった。

日々の料理を作るうえでのポイントが、Q&A方式で書いてあって読みやすい。
旬を大事にシンプルに作る家庭料理のこつ集なので、いつだって聞きたいし何度も読んで自分のものにしたい内容。

ふだんのおかずは、きっちりした献立を考えるのではなく、旬の野菜を炒めたり煮たりするくらいでいいのです。そこにちょっと、油揚げやじゃこやお肉などが入っていれば十分

この有元葉子の言葉はありがたい。日々のご飯って、旬の野菜をおいしく食べられたらそれでいいんだな~って思うと、料理を作るのが楽になるし、変にあれこれするより美味しいものができちゃう。
この本を読んでから青菜のだしびたしを何度も作っているけど、いつも美味しくてほっとする。小松菜と油揚げの炒め煮も美味しい。

有元さんが朝食を皿にのせて一気に蒸して一皿作ってしまう話が面白かった。あと、ラップがきちきちで驚かれる…という話も。こつ・技術の話だけじゃなくて、有元さんがどう考えているか、ということやどんな風に日々を過ごしているか、ということも書いてあって、読んでいて楽しい本だった。

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わかったつもり 読解力がつかない本当の原因

「わかった(つもり)」という状態がいかに読む上で障害になるかということと、そこからどう脱却するかということが語られる…のだけど、
「わかったつもり」から「よりわかった」状態になったとしても、それはまたある種の「わかったつもり」の状態であり、「読み」に終わりはないのです。
という話になる。なので、「これ結局『わかったつもり』を脱却してもそこがまた新たな『わかったつもり』の無限ループじゃん…」という、悪夢から脱出することのできない、救いのないホラー作品のような構造で面白かった。

「私はこの本を100%理解した!!」なんてことはありえない…というのは言われてみれば当たり前だけど、なんとなく「理解した」「わかった(つもり)」になってしまうというのはよくあること。つらい事実でもあるけど、読んでわかった気になっても、まだその先がある…というのは、読書の面白さを感じる部分でもある。

「新鮮ではない、文脈を感じる場所の読み飛ばし」と「いろいろある、とわかったつもりになる」というのは結構やりがちなので気を付けたい。

輪読とか読書会みたいなものに参加したり人と感想を話し合ったりして、自分の「わかったつもり」を壊したいな~という気持ちになる本だった。

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8月から、読書日記をつけはじめた。

これが結構よくて、あとから感想を書いたり、「あの本を読んだ時に気になったこと、なんだったっけ?」とか思った時に参照したりするのに役立っている。
あと、単純に本のことを考える時間が増えて楽しいし、読んだ本のことが記憶に残るようになった気がする。