2021年8月に読んだ本。ヒトの発達の謎を解く、科学的とはどういう意味か、 レシピ以前に知っておきたい 今さら聞けない料理のこつ など

8月に読んだ本は5冊。そのうちの4冊について書く。
新書を多めに読んだけど、どれも面白くて良かった。

ヒトの発達の謎を解く

親になるということで、人の発達についての本を読もうと思い手に取った一冊。
ニコ・ティンバーゲンという研究者の論が骨子として出てくるのだけど、ニコ・ティンバーゲンのことを「私が尊敬してやまない」という言葉で紹介しているのがとてもいいと思った。他にも端々から著者の思いがにじみ出ているというか、熱が感じられる。くどかったり湿っぽかったりすることはないのだけど、研究と、その研究の内容を世の中に伝えるということに対しての思いがじわじわ伝わってくる、いい本だった。

様々な実験や学説を参照しながら進んでいくのだけど文章がくどくなく、簡潔でわかりやすかった。エピジェネティクスやアタッチメント理論といった、聞きなれない言葉から育児書などでもよく見るような言葉まで、ちゃんとしたエビデンスを参照しつつわかりやすく伝えてくれる。そしてそれらを束ねて主張に繋げていく構成がうまいなーと思いながら読んだ。
難しい学術書とかだと文章を追うだけで大変だけど、新書だと構成の面白さとかまで意識しながら読めるから楽しくて好き。

生物としてのヒトと、人間社会・技術の発展の両方について語られている本だった。IT関係の仕事をしているということもあり、子育てについても新しい技術をどんどん取り入れていきたいなと考えがちだけれど、生物としてのヒトという観点を忘れてはいけないなと思った。

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科学的とはどういう意味か

2011年、東日本大震災の後に書かれた本。新型コロナウイルスの流行が日々の行動にも大きく影響する今もまた読むべき時だと思い、再読した。

今の日本の社会では多くの人が科学を遠ざけてしまっているが、それは自身にとっても社会にとっても危険であり不利益なことだと言う。
物事の理屈を知ることを避け、「とりあえず結論だけ教えて」という態度の人が増えてしまっているという指摘はかなり耳が痛い。新型コロナウイルスの情報などはTwitterで信頼できる人を見つけて、その人の言うことをある程度は信じる(なぜそうなるかの説明は、ちゃんと考えながら読む時もあるけど時にはすっ飛ばす…)ということをしていたので、それはまさに「とりあえず結論だけ」という態度だなーと。ある程度はそうしていかないと仕方ないとは思うけど。

そんな耳が痛い話の後に、科学的な「誰にでも再現できる」「結論だけではなくその筋道を確かめる」という方法や、普段科学的なものを遠ざけてしまいがちな我々が科学から離れすぎずにいるためにはどうすべきか書かれている。

全体的に「文系」なるものに対しての恨みつらみのようなものが熱く語られているのがちょっと難だし、人文科学について触れられていないのも気になるのだけど、面白い本だし今読み返して良かったなと思う。『FACTFULNESS』とこの本はちょいちょい読み返して自分に教え込んでいきたい…。

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レシピ以前に知っておきたい 今さら聞けない料理のこつ

「今さら聞けない」という、控えめに脅しているようなサブタイトルがあまり気に入らないのだけど、いい本だった。

日々の料理を作るうえでのポイントが、Q&A方式で書いてあって読みやすい。
旬を大事にシンプルに作る家庭料理のこつ集なので、いつだって聞きたいし何度も読んで自分のものにしたい内容。

ふだんのおかずは、きっちりした献立を考えるのではなく、旬の野菜を炒めたり煮たりするくらいでいいのです。そこにちょっと、油揚げやじゃこやお肉などが入っていれば十分

この有元葉子の言葉はありがたい。日々のご飯って、旬の野菜をおいしく食べられたらそれでいいんだな~って思うと、料理を作るのが楽になるし、変にあれこれするより美味しいものができちゃう。
この本を読んでから青菜のだしびたしを何度も作っているけど、いつも美味しくてほっとする。小松菜と油揚げの炒め煮も美味しい。

有元さんが朝食を皿にのせて一気に蒸して一皿作ってしまう話が面白かった。あと、ラップがきちきちで驚かれる…という話も。こつ・技術の話だけじゃなくて、有元さんがどう考えているか、ということやどんな風に日々を過ごしているか、ということも書いてあって、読んでいて楽しい本だった。

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わかったつもり 読解力がつかない本当の原因

「わかった(つもり)」という状態がいかに読む上で障害になるかということと、そこからどう脱却するかということが語られる…のだけど、
「わかったつもり」から「よりわかった」状態になったとしても、それはまたある種の「わかったつもり」の状態であり、「読み」に終わりはないのです。
という話になる。なので、「これ結局『わかったつもり』を脱却してもそこがまた新たな『わかったつもり』の無限ループじゃん…」という、悪夢から脱出することのできない、救いのないホラー作品のような構造で面白かった。

「私はこの本を100%理解した!!」なんてことはありえない…というのは言われてみれば当たり前だけど、なんとなく「理解した」「わかった(つもり)」になってしまうというのはよくあること。つらい事実でもあるけど、読んでわかった気になっても、まだその先がある…というのは、読書の面白さを感じる部分でもある。

「新鮮ではない、文脈を感じる場所の読み飛ばし」と「いろいろある、とわかったつもりになる」というのは結構やりがちなので気を付けたい。

輪読とか読書会みたいなものに参加したり人と感想を話し合ったりして、自分の「わかったつもり」を壊したいな~という気持ちになる本だった。

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8月から、読書日記をつけはじめた。

これが結構よくて、あとから感想を書いたり、「あの本を読んだ時に気になったこと、なんだったっけ?」とか思った時に参照したりするのに役立っている。
あと、単純に本のことを考える時間が増えて楽しいし、読んだ本のことが記憶に残るようになった気がする。

システム手帳でバレットジャーナル(っぽいもの)を気楽に試す

今までずっと綴じ手帳だったけど、システム手帳を使ってみたくなった。
それと同時に、手帳をバレットジャーナルに切り替えたくなった。

バレットジャーナルは公式のものがロイヒトトゥルム1917から出ているし綴じ手帳前提のやり方だと思うので、あまりシステム手帳で使っている人はいなさそうだけど、結構アリだと思ったので自分が試してみたやり方を書く。

「お金をかけずに試してみる」をテーマにしたので、初期投資は2,000円もかからなかった!
ロイヒトトゥルムとか買うより安いし、ハマらなかったら転用もしやすい。
バレットジャーナルが気になっている人に、こんなやり方もあるよ~と伝われば。

最初に買ったもの

安価なバインダー

まずは試してみてから、もしいい感じだったらイケてる手帳カバーを買おう…と思っていたので、カバーを買った後もリフィル保存用に転用できそうなシンプルなバインダーを買った。
スリムタイプだったか、バイブルタイプだったかは失念(たぶんスリムだと思う)。500円くらい。
マイシステムバインダー | システムバインダー|製品情報 | 株式会社エイチエス

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お気に入りのポストカードを表紙裏に挟んだらちょっといい感じになった

月間カレンダーのリフィル

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(※しばらく試して手帳カバーを買った後に記事を書いたので、写真に写ってるのはバインダーではなく本命の手帳カバーです…)

フューチャーログとマンスリーログの部分は端折って、今まで通りの月間カレンダー形式を使いたかったので、リフィルを買った。

店頭で見て、線やカラーリングが控えめで良いなと思ったBindexの53番。660円。

習い事とか仕事の定例会議のような毎月繰り返す予定はカレンダー形式がしっくりくる。
しばらく試してみて、やっぱりバレットジャーナルのシステムでやるならここも公式のやり方に合わせた方が良い、と思ったらそちらに変えるかも。

一気に変えず、色々試しながら変えていけるのがシステム手帳形式の良いところ!

ドット方眼のリフィル

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3.5ミリ方眼は少し狭いので、2行まとめて7ミリ方眼として使っている。100枚入って550円。

日によって書く量が全然違っても何も問題がないのがありがたい。
深いこと考えず、頭に浮かんできたことを書いていってる。集中するまでの注意力散漫な時間をうまく落ち着かせてくれる気がする。


インスタで手帳関連のタグを見ていると、ロイヒトトゥルムやモレスキンのノートを使って綺麗な見栄えのするページを作ってる人がたくさんいる。そういうのもいいけど、ちょっと試してみるにはハードルが高い。
このシンプルなやり方は時間もかからないし、絵心もいらないし、お金もそんなにかからない。合わないと思ったら別の使い方に簡単に切り替えられる(綺麗な気合入ったノートは途中で気が変わった…といって別なものに転用できないのがつらい!)。

そんなわけで、バレットジャーナル興味あるなーという人にこんなやり方もあるよとお伝えできたら。

ウィークリーの手帳から切り替えて思ったこと

考えたことやタスクを頭に溜め込まないで紙に書きだしていけるのは凄く気分がいい!頭がすっきりする。

日によって書く量(=頭に浮かんでくる考えの量とか、タスクの量)が違うのがウィークリーでは結構困ったことだったけど、ドット方眼に上から下にずらーっと書いていけばいいバレットジャーナルのやり方は細かいこと気にせず書けて良い。

綴じ手帳から切り替えて思ったこと

こういうページが欲しいと思ったら好きに追加できるのが良い!
例えば私は飲んだお茶についてとか、日ごとの睡眠時間や睡眠の質について専用ページを作っているけど、こういう専用ページをいつでも好きな場所に作れるのは面白い。このやり方は合わないなと思ったらリフィルを外してしまえばなかったことにできる。なかったことにできるから気楽にページを設けられる。これは綴じ手帳と大きく違うところだと思う。
柔軟に色々試せるのは手帳好きには楽しい。

真ん中のリングが邪魔にならないか、というのが心配だったけど、今のところそれはあまり気になっていない。

【D2R】Diablo2(ほぼ)初プレイで気になったこと、ハマったこと

初心者目線で気になったことやハマったことの解決策を書いていく。

Diablo2は初プレイではないけれど、発売当時は義務教育中で、怖いのと英語がサッパリわからなかったのとでほとんどプレイしていない。
Wikiやブログ記事など当時の遺産を参照しながら現在ノーマルAct5プレイ中。ナイトメアやヘル、そもそもノーマルクリアを見据えた話にはなっていないのでそこは留意して読んでもらえると幸い。

操作系

Ctrl+クリックでアイテムを捨てたり倉庫に入れたりできない!

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これめちゃくちゃ困った!
ヨーロッパサーバーだと起きる現象っぽい。サーバーを南北アメリカかアジアに切り替えたら発生しなかった。

ラグい、鯖落ちがひどい

アジアサーバーでプレイしてると、平日23時以降とか結構重くなる気がする(たまに切断もされる。ラグいなーと思ったらボス戦とかしない方がいい/良さげなアイテムが出ても拾えずサーバーから切断されるかも)。
南北アメリカサーバーに切り替えるとマシになるかもしれないけど、アジアサーバーから人が流れるのかそっちも重くなることが多い気がする。

傭兵がすぐ死ぬ

Shift+1-4でベルトから傭兵にポーションあげられる。
けど、結構手遅れになって死ぬことも多い。ポーションは回復するまで間が空くので、早めにあげるようにしたら死ににくくなった。

アイテム管理

持ち物が即いっぱいになる
  • 基本、白&灰色アイテムは無視する
    • 「上質な」が付く灰色アイテムは、Act4あたりからそこそこ金になるのとルーンワードのネタにしたいので、高そうなものと自分が装備したそうなものは拾うようにした。
  • ポーションは大体必要な数くらいは確保しておいて、あとは売る。
    • ただ、中・大以上のポーションは倉庫に置いといても良いかも。私はディアブロ戦で大量消費して店で買いまくる羽目になった。まぁAct4, 5あたりになるとお金に余裕も出てくるので、そこまで節約プレイをしなくてもいいかもしれないが…。
倉庫が即いっぱいになる

「あのクラスで使えるかもな~」とかいうアイテムが溜まってきたらサクっとそのクラスのキャラを作成して、そのキャラの個人倉庫に移しておく。
新規キャラ追加=倉庫のタブ1つ追加なので、うまく使う。

そもそもノーマルで出る装備はたかが知れてるので大したレアじゃなければじゃんじゃん売ってお金にしている。
まだプレイしていないクラスの装備の良さはわからないことが多いので、販売価格で判断することが多い。自分が今装備しているアイテムの販売価格より高かったりしたら「これはいいアイテムだ」と判断する。

ステスキル、装備

ステスキルどう振ったらいいかわかんない

一番最初のクエストをクリアすると、アカラがステスキルをリセットしてくれる。これはクエストクリアごとに1回(つまりノーマル、ナイトメア、ヘルでそれぞれ1回ずつ)。
そんなわけで各難易度1回はステスキルをリセットできるので、いったん好きに振ってもいいかもしれない。
私はスキルについては↓のビルドガイドを参考にした。
ビルドガイド - D2XSpoilerJ Wiki*

正直ステータスは上記ビルドガイドを見てもわけがわからなかったので、基本的にポイントを貯めておいて「足りない…」と思った時に必要なところに追加していく方式にした。
そんな感じでAct4まで進んだ時のステータスは↓の記事に書いているので、ソーサレスをプレイしたい人には参考になるかもしれない(ノーマルクリアもしていない状態なので参考にして良いものかはわからないが…)。
nappyon.hateblo.jp

マナ足りない

生命力にポイント振ってもマナ総量が上がるので、生命力にポイントを振る。
ビルドガイドを見た感じ、エナジーに振るのはコスパが悪いっぽい。

あとは、敵を倒すごとにマナ+2とか、マナ+30とか、マナ回復速度上昇+15%とか、その辺の効果がある装備を付ける。
私の場合はノーマルAct4までLeaf、Act5までStealthが使えている。
RWについてはけまいチャンネルというYouTubeチャンネルが初心者に優しい。【ぶっ壊れ性能多数!】初心者必見!Diablo2: Resurrectedで絶対に知っておきたい序盤ルーンワード集!【PS4/PS5/XSX/Switch/ディアブロ2:リザレクテッド攻略】 - YouTube

RWの装着先が見つからない

LeafとStealthについては、正直そんなに長く使うものではないと思うので店売り武器で良いと思う。
Act2でマジックアイテムではないソケット付き装備が店売りしているので、Act2でプレイ→店売り装備チェック→いいのなければゲーム終了→プレイ→装備チェック…を20分くらい繰り返したら2穴胸当てと2穴ナールド・スタッフが見つかった。 f:id:nappyon:20211004000407p:plain
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一応いい感じのアイテムが出るまで吟味して、20分くらい。

チャルシのエンチャントって何回もできる?

アカラのステスキルリセットと同じくクエストクリアごとに1回!
初回プレイで本当にどうでもいい装備をエンチャントしてしまい後悔した。

ボスで死にまくる

ボスが出そうな場所の手前でTP出すのは鉄板。
あと、ベルトは装備効果より段数重視が良いと思う。
個人的に一番大変だったディアブロ戦については、上でもリンク貼ったけどソーサレスでの戦い方を↓の記事に書いた。 【D2R】貧弱ソーサレスでのノーマル混沌の聖域&対ディアブロ戦メモ - 日常が7で非日常が3くらい

【D2R】貧弱ソーサレスでのノーマル混沌の聖域&対ディアブロ戦メモ

ノーマルで結構苦労したので記録。
死にまくって傭兵復活させまくり&ポーション買いまくりでがっつりお金がなくなって焦ったけど、コツを掴めば安定して戦えた。

勝利時のパラメータ

まず、対ディアブロで勝利した時のレジスト値は火炎75、電撃55。
最初に挑戦した時、火炎が30くらいだったけどディアブロの魔法にあまりにもがっつり持っていかれるのでレジ値を上げて対策した。
RW Leaf付きの両手杖を持っていたけどオーブと盾に持ち替えてレジを確保。
電撃魔法はわりと避けられたので、火炎のレジ値を優先した。
あと、魔法ダメージ軽減も付けておいた。 f:id:nappyon:20211003224909p:plain

スクショを忘れたけどレベル3くらいのブリザードとレベル5くらいのファイアボールで戦ったと思う。

混沌の聖域での封印解除

混沌の聖域でも何度か死んだ。
封印を解除していくと敵が出てくるけど、右下のデーモン軍団が一番強かった。
封印の手前でタウンポータル(TP)を出しておいて、いつでも逃げられるようにしておくと良い。
あと、万が一死んだ時のために右下から解除していくようにした(ゲーム作り直しで死体回収を行うと、封印解除が最初からやり直しになるので)。

ディアブロ戦の前に

f:id:nappyon:20211003225915p:plain ディアブロ戦も手前でTP出しておくこと!
後述するが戦う位置はディアブロ出現場所(真ん中の星のところ)の左上にするので、この辺りにTPを置いておくとよい。

ディアブロ

f:id:nappyon:20211003230102p:plain ポイントは3つ。

  1. 4つあるオブジェがディアブロの魔法を防いでくれるので(画像みたいな感じ)、ディアブロ出現場所の左上で戦うのが良い。
  2. 傭兵は死にまくるしあまり役に立たないので復活させない。
  3. ディアブロから離れると少し時間が稼げる(すぐに近寄ってはこない)ので、ベルトへのポーションセットはディアブロを画面外に置いて落ち着いて行う(あらかじめ地面に撒いておくのもアリかも?)。
  4. 長期戦になった時のためにスタミナPを持っておくか、あらかじめ飲んでおくと良い。

ソーサレスでのディアブロ戦はとにかく避けゲーだと思う。ディアブロと自分の間にオブジェがあるような位置取りを保って、ひたすらブリザードを撃つ。
いきなり地面に火を出してきたり、熊のように駆け寄ってきたりするのでオブジェ付近をぐるぐる回りながら戦う。ブリザードで遅くしているので、駆け寄ってきて殴るのはわりと簡単に避けられるはず。
長いこと避け続けることになるので、スタミナが結構ギリギリになる。スタミナPがあると安心。

自分の場合装備も整っていないしスキルも定まっていなかったのでかなり長期戦になった。
ただ、上記のやり方でならあまりダメージを受けることはないので、マナPとスタミナが尽きるまでは安定して戦える。あとは集中を切らさず、避けながら落ち着いてブリザード(とたまにファイアーボール)を撃つのみ。

2021年6,7月に読んだ本。飼い喰い、くらすたのしみ

6, 7月は妊娠が発覚~つわりに呻いて過ごす日々だったので本をあまり読まなかった。

飼い喰い

ほんっとーに面白かった。家ではゲラゲラ笑いながら読んだし、不妊治療のクリニックの静かな待合室でついつい笑ってしまったりもした。不妊治療では精神的にも肉体的にもちょうどしんどい時期だったけど、そんな時に面白い本を読むことができてかなり救われた。

「豚を育てて食べるまでの暮らしが綴られているのかな?」と思って手に取ったのだけど、思った以上に日本の養豚についても詳しく扱われていた(歴史や数字、現場についてなど)。
良質な食ドキュメンタリー作品だと思う。ネトフリの食ドキュメンタリー(アグリー・デリシャスやタコスのすべて、フェスティブ・フーズ、ジェイソンのマーケット探訪など…)が大好きで、もっと日本の食についてもこういうドキュメンタリーなどを見たいなぁ、と思っていたのだが、これはその気持ちにぴったりハマる一冊だった。
その内容でそんなにゲラゲラ笑えるのか?と思われそうだけど、筆者の率直な疑問やその答え、感想がいちいち面白い。そして筆者があまりにも「豚を飼って喰う」ということに猛進しすぎて、周りが引いてしまっていたり、筆者が自分でも何をやっているんだと後悔していたりするのが笑える。個性豊かな豚たちに翻弄される様子もまたおかしい。

日本の食について興味がある人はもちろん、面白いエッセイが読みたい人(私にとってはさくらももこのエッセイくらい笑えた)にもお薦め。

高野秀行による解説にある「本当に、内澤さんもあの家もどうかしていた」「異常な家と住人の中で、不思議と唯一まともだったのが豚だった」という言葉が最高。

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くらすたのしみ

日々の暮らしの中で、ちらちら瞬く小さな輝きや、心に浮かぶ愛着などをたくさん捉えたエッセイ集。

「暮らしとは、私という主語を持つこと」「少しくらい雑でも、ダメなときがあっても自分の楽しみを探すことこそ、私が望む暮らしのありかた」と筆者が書いているように、一つ一つの文章には筆者が暮らしの中で抱いた感情や思考が書かれていて、筆者が過ごす私という主語のある日々のことを読むことができる。

私も、こんな風に私という主語の暮らしを楽しみたいし、文章に残して自分でも私の暮らす楽しみを振り返りたい、そう感じる本だった。

荒川洋治の『日記をつける』という本の中にも「私という主語」について書かれた文章がある。

どんな「私」でも、「私」がいれば日記は成り立つ。一個の「私」を、このもやもやした世界のなかから、もやもやした自分のなかから取り出していくためにも日記は欠かせないものだと思う。

社会に生きていて、自分がよくわからなくなったり人の暮らしを羨んだりすることも多いけれども、2019年からちらほらブログを書きだして、2020年から5年日記を始めて、少しずつ私という主語の感情や思考を取り出して残すことができるようになってきている…かもしれない。
この本はちょっとした時に読み返して、私という主語を持って暮らしを楽しむことについて、確かめ直したい。

収められているエッセイの中では、「クラシックホテルの気配」「ものを持つ暮らし」「炎の中に浮かぶ憧れ」などが好き。
私はものを持つのが苦手で、旅先で素敵だなと思ったものを心ときめくように飾ったり、活用したり、人に譲ったりすることがうまくできないのだけど、筆者はそれが抜群にうまい。素敵だなあと思うし、ほんの少しだけ自分でも真似してみようかな、と思ったりする。たぶん十年くらいかけて真似してみて、ちょっぴり近づけるくらいだろうけど。

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5月半ばから読み始めた『心と脳――認知科学入門』は途中で止まってしまった。まぁそのうち再開しよう。

なかなか過酷な2か月間だったけど、精神的・肉体的にしんどい中でも本を読んで大笑いしたり、自分の生活に大事なものが何かを再確認したりと、本を楽しむことができたのはすごく良かった。

2021年5月に読んだ本。わたしがいなかった街で、日常 Vol.1、中国茶&台湾茶 遙かなる銘茶の旅

5月に読んだ本は3冊。 5月はなぜか中国語学習にはまっていてあまり本を読まなかった。

わたしがいなかった街で

↓こんなことを呟いたらバーニングさんにおすすめしてもらいました。ありがとうございます!

なかなか難しい小説だった。主に砂羽という人物の視点で話が進む。砂羽は夫と離婚後、引っ越しをして、どこか定まらず、足の置き場が見つからないような暮らしをしている。契約社員として働いていて、職場での人との交流はぎこちない。家では戦争や紛争を撮ったドキュメンタリーばかり見ている。

そんな砂羽は、「もし過去が違えば、わたしはここにいなかったかもしれない」とか、「なぜわたしは彼らではないんだろう」といつもぐるぐる考えを巡らせている。
この本が面白いのは、文章が砂羽の思考をなぞるようにぐるぐる、だらだらしているところ。読むのが大変なんだけど、同時に面白くもあった。

物語の途中から、葛井夏という人物の視点が入ってくる。夏と、砂羽の世界とのかかわり方は対のように描かれているような気がした。 この、世界とのかかわり方の違いが心に残っている。また、読み終わってからもふとした時に思い出される。

砂羽は、人と自分との境界があいまいな人物として描かれていると思う。
前述のように、ドキュメンタリーのカメラに映る人物を見て「なぜわたしは彼らではないのか」と感じるし、友人のなかちゃん(行動力とコミュ力の鬼のような人物)がわたしの代わりに色々なものを見てきてくれるから、その話を聞くだけで楽しい、というようなことを言っている。
また、砂羽は今よりも過去を生きているような印象を受ける。
海野十三『敗戦日記』で描かれている土地を歩いたり、原爆が投下される少し前まで広島にいた祖父母から砂羽への血のつながりについて考えたり。ドキュメンタリーのカメラが捉えているのも過去のことだし、なかちゃんが話してくれるのだって過去に起きた出来事だ(まぁ、なかちゃんは今そこにいる人物なのだが)。

夏の視点では人と自分との境界がはっきり描かれる。「わたしは彼らではない」「彼らと同じように感じることはできない」と明確に感じる出来事も起こる。
しかし、人と自分とは違うというところから人を突き放すわけではなく、「わからないから聞く」というスタンスを取るようになる(砂羽の友人であるなかちゃんの行動の影響を、長年友人である砂羽ではなくたまたま会った夏が受けるのがまた面白い)。
今ここにいる人に聞いてみる、という意味では、過去と現在という意味でも砂羽とは異なって描かれているかもしれない。

私は夏に共感するし、夏のパートの方が気持ちよく読めたものの、やってることはわりと砂羽に近いよなと思いながら読んでいた。ドキュメンタリーや紀行文などが好きで、砂羽と同様に人の体験を借りて物事を感じたり楽しんだりしている。Twitterで人が書いた経験を読んで一緒に怒ったり楽しんだりすることも多い。今ここにいる人と話したり、何かを聞いたりすることは苦手だし、そういった行動を取ろうとはあまり思わない。
この作品はそうした捉え方や行動、感じ方に価値判断を下すような作品ではないし、砂羽と夏の描き方もざっくり捉えたら対になっていると感じたけれども、そう単純でもない。
だからこそ、読み終わった後にも心に残って、自分が何かを見たり感じたりするたびに思い出されるし、思い出して色々考えてしまう。

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日常 Vol.1

SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERSで購入。
この本屋さんは最近たまたま見つけたんだけど、本の並びがすごく好みで、見ていてワクワクする。趣味の本、思索を深められそうな本、美しい本、社会の問題を捉えた本、色々あって読みたい本が増える。
そんなに間をあけずに2度訪れたけど、結構棚の並びが変わっていた印象(タイミングもあるかも)。行くたびに発見がありそうなお店。

この本は色味とタイトルが良いなと思って手に取った。手触りや本文の雰囲気、写真もいい。

日本まちやど協会というところが発行していて、テーマはずばり「まちやど」。
まちやどとは、「まちの日常を最大のコンテンツとすることで、地域固有の宿泊体験を提供」するものらしい。その地域の人々とその暮らしを、旅行者につなげてくれるもの。

「まちの日常」っていうのはまさに、私が旅に求めているけれども、旅で得るのが難しいと感じている体験だった。旅先で、「この街の人々はどんな暮らしをしているんだろう?」と思うことが多く、それを垣間見ることができるととても嬉しく感じるけれど、そうした経験ができることは極々まれだ。その土地に住む人々との交流となるとさらに難しい。こういうことが得意な人にとっては難しくないのかもしれないけど…(『わたしがいなかった街で』のなかちゃんみたいな人とか)。
紹介されている宿にぜひ行ってみたいと思う。幸い、今年の5月に出たばかりなので情報はとても新鮮。

まちやどを紹介する本としてだけでなく、自分が住む地域のコミュニティや人とのつながりについて考えるための本としても良いと思った。
こんな風に地域の人と関わってみたいなと感じられた(ちなみにこの本を読んでちょっとしてから、地域のコミュニティカフェみたいなところに行ってみた!探せば意外とあるみたい)。

日常、地域のコミュニティ、土地の特色など、まちやどに関わる要素に惹かれる部分が多いので、次号も楽しみ!(年刊誌が予定されているそうなので、残念ながら読めるのはちょっと先) manapub.stores.jp

中国茶台湾茶 遙かなる銘茶の旅

中国、台湾に何度も足を運び、現地で製茶や茶文化、歴史などを学んでいる著者によるエッセイ本。
先月読んだ『中国手仕事紀行』でも一部の村で製茶の現場や古茶樹を訪ねていたけれど、この本は一冊丸っとお茶の旅(先月読んだ本についてはここ→4月に読んだ本。1984年に生まれて、中国手仕事紀行、英語独習法、一九八四年〔新訳版〕 - 日常が7で非日常が3くらい)。

著者が訪れるのは電気も通っていない山の中の村だったり、自然に囲まれた土地。ということで、描かれているのはなかなかワイルドな旅で面白い。滞在先で食べた料理の話や、茶師や友人との交流についても色々書いてあって、お茶以外の要素でも楽しめる。

茶については、製茶や歴史について様々な文献を挙げながらの解説に加えて、どんな人たちが、どんな環境でどんな風にお茶を作っているのかが詳しく書いてある。
この本を読んで、日本で良質な中国茶台湾茶が飲めるというのは本当に幸せなことだと改めて感じた。人の手で行われる製茶はとても過酷で難しく、茶を取り巻く環境というのも常に変わり続けている。社会もそうだし、気候だって変わっている。そんな状況の中で、お茶を生産している人がいて、その人とお茶を通して繋がれるというのはとてもありがたいことなんだと思った。お茶を丁寧に味わって飲みたいと改めて感じた。

中国・台湾の紀行エッセイとしても、中国茶台湾茶入門としても楽しめる一冊。 honto.jp


5月は『わたしがいなかった街で』を読んだのが大きかった。
なかなか自分にスムーズに入ってくる文章でも物語でもなかったけれど、だからこそ色々考えたし、自分の中に残っている。

先月読みたいと書いた『心と脳――認知科学入門』を5月半ばから読み始めた。6月も引き続き楽しく本を読み続けたい。

2021年4月に読んだ本。1984年に生まれて、中国手仕事紀行、英語独習法、一九八四年〔新訳版〕

4月に読んだ本は4冊。 読んだ本がどれも面白くて、いい1か月だった。

1984年に生まれて

バーニングさんのブログをきっかけに読んだ本。いい本を読むことができました。感謝です。 burningsan.medium.com

1984年生まれの軽雲という女性を主人公として、1984年生まれの郝景芳が描く、自らの経験とフィクションとを織り交ぜた「自伝体」小説。

20代で今後の進路を模索する軽雲のパートでは2000年代の中国が、そして軽雲が生まれる前後、同じように今後の人生について悩む父・沈智のパートでは1984年の中国が描かれる。文化大革命が終わった後、資本主義的な空気が流れ込んできてもいるけれど規制もある沈智の時代と、国外への道が開かれて、国外に出る者もいれば国の発展を強く信じて国内で成功を目指す者もいる軽雲の時代。
どちらの時代についてもほとんど知識やイメージを持っていなかったけれど、軽雲・沈智の周囲の人々とのやり取りや、描かれる風景を通して、時代の空気を感じることができた。知識がなくてもスムーズに物語に入っていけたのは、著者の小説のうまさと、翻訳のうまさと、適切な訳注のおかげだと思う。

沈智と軽雲の「自分はこのままでいいのだろうか?」「自分は何をなすべきか?」という、生き方の不安や葛藤に共感しながら読み進めたが、だんだんと軽雲のパートでは個人の不安や葛藤ではなく、国・社会に対する不安や疑念が描かれていくようになる。
SF的な要素を除いて読んでも、個人として共感できる物語だし、SF的な要素を考慮すると、社会派な、批判的なSFであるようにも読めてくる。

エンディングはかなり驚きだったけれども、本・物語に対する愛情を感じるような終わり方だとも思った(非情であるようにも思えるが)。この本で描かれた物語だけでなく、他の本で描かれていた物語についても感情が沸き上がってくるような。
読み終わってから表紙を眺めると、最初に見た時とはまた違って見えてくる。中国語版の表紙は人物ではなく葉が少し落ちた木なのだけど、日本語版のこの表紙はまた面白い。

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中国手仕事紀行

なんとなく手に取ってみたら、お茶や食の話が思ったよりも多くて自分好みの一冊だった。
手仕事と言うと民芸品というイメージが浮かぶけど、確かにお茶も食もまぎれもなく手仕事だ。

TRANSITのこの前の中国号でお茶の記事を書いていたのはこの人らしい。この記事も良かったし、この人の紀行文、好きだなーと思った。
ちなみにTRANSITのこの号はどの地方にはどんな食の特徴があるのか?といったざっくりした話から、中国食品百科全書という特集で多種多様な食材の解説が細かく書かれていたりする。そして最近の食事情も書いてあってすごくいい。ほんとに永久保存版だと思う。 www.fujisan.co.jp

『中国手仕事紀行』の方に話を戻すと、どんな風景の村・街で、どんな人たちが何を生業に暮らしてるのか、そういう生活が描かれた文章でとても良かった。ただ、そういう目に映る風景の描写だけでなく、筆者の新鮮な感動みたいなものも素直に書かれていて一緒にテンションが上がる。
写真もしっかりカラーで大きく見られるのが嬉しいし、地図も載っているので地図と合わせて場所を確認できる。旅気分に浸れて、本当にいい一冊。

『中国・韓国 やきものと茶文化をめぐる旅』と一部の行き先が被っているので、あわせて読むと面白いと思う(こちらは今読んでいる途中)。 honto.jp

英語独習法

1月に読んだ『ことばの発達の謎を解く』に引き続き、認知科学の研究者である今井むつみさんの本を読んだ。

今井むつみさんの研究テーマは「言語と思考の関係」「ことばの発達」「学びと教育」で、この『英語独習法』はこの3つのテーマが重なるところにある本だという。読んでいると、「英語学習者として実践したい」と思う箇所もあれば、このようなテーマに興味がある読書家として読んでいて面白い箇所もあった。
人の知覚、記憶、思考や学習のしくみはどうなっているのか?というのが認知科学で、この本はそれを説明した上で「だから、このように学びを進めていくべきだ」と提示する。もちろん提示される独習法というのも有用だしそちらが本題なのだが、そもそもの認知科学の部分の説明を読むだけでも十分面白い。

スキーマというのが重要な概念として出てくる。「一言でいえば、ある事柄についての枠組みとなる知識」で、例えば母語についての知識もスキーマの一つだという。母語で言葉を話す時、主語だとか述語だとか、過去形だなんてことは意識せずに話しているが、こうした無意識にアクセスされる知識のシステムがスキーマ
外国語を学習する際には、このスキーマを構築していくことが鍵なのだという。
認知行動療法の本を読んでいてスキーマという概念が出てきて、自分の精神を安定させる上でかなり役立ってくれた(と思っている)のだけど、言語について学んでいてもこの概念が出てくるとは。

個人的に、「人は世界をどのように見て、どのように評価しているのだろうか」ということに強い興味があるので、今井むつみさんの書かれる認知科学の本はどれも面白い。『ことばと思考』『学びとは何か』なども読みたい。

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一九八四年〔新訳版〕

途中まで読んで積んでいたものを、『1984年に生まれて』を読んで慌てて読了。

監視社会の恐ろしさ。監視社会を描いた作品ではないが、映画のサトラレを見た後のような「知られているかもしれない」という怖さが湧く。

とても暗く、絶望的な話なのだが、『次の夜明けに』を読んだりした影響かわからないけれど、プロールに関する記述や附録の文章が強く印象に残って、希望が全くない話ではないと感じた。SF恐怖小説でありつつ、物語を通して「民衆が力を出すことでこのような恐ろしい社会も覆せる(その到来を防ぐことができる)」と人々に語りかけているようだと思った。

解説がないと知らずに電子書籍版を買ってしまったので、ピンチョンの解説は読めず。

かなりキレました。

文庫を電子書籍化したときに解説を省く慣例はほんとに改めてほしい - Togetter こちらのまとめ(2015年)にあるように、どうやらそれが慣例らしい。6年前から状況変わっていないってどういうこと!
どうやらレーベルによっては解説が収録されているものもあるみたいだけど…購入前に確認するのが難しいから、あんまり電子書籍で小説を買うことはないだろうな。

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2,3月に引き続き、中国に関連する本を多く読んでいる。お茶教室に通っていたり、中国語を勉強し始めたのもあって興味がそちらに向いている。
今は岩波新書の〈シリーズ 中国の歴史〉というのが気になっている。今読んでる本が落ち着いたら、読んでみたい。

あと、認知科学についての興味を再確認したので、入門書など読みたいなあと思った。
『ことばの発達の謎を解く』と『英語独習法』の両方で参考文献に挙げられている『心と脳――認知科学入門』が良さそう。

ブログを書くことにしたことが影響しているのか、去年よりもたくさん本を読めている気がする。結果、いい本との出会いも多い。
なかなか外食や行楽は気楽に楽しめない時世だけれども、読書で楽しむことができる人間なので、あまり外には出ずに家で読書を楽しめたら…と思っている。